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本から閃き

【読書感想】『ベストセラーコード--「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』

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内容紹介
ダ・ヴィンチ・コード』、『ミレニアム』シリーズ、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』――。ベストセラーが売れるのは偶然なのか? それとも黄金の法則が存在するのか? テキスト・マイニングと計量文献学の最新技術を駆使して読者を魅了する秘密のDNAを明らかにした、文学界騒然の注目作。

ベストセラーの本とそうでない本の違いは何か、文章構造の側面から明らかにしようとするのがこの本の狙いだ。

 

コンピューター・モデルに原稿を読ませて、数千という特徴を調べさせた結果、ヒットする小説には特有のパターンがあること、そして、そこには読者の読書と結びつけて語る価値があることがわかった。

モデルとは、事象の構造の共通性に着目して、それを論理的に形式化したもののことだ。

 

基本的に本書は、テキストマイニング形態素解析)によって判明したことをまとめており、技術的なことにほとんど触れることはない。

 ↓テキストマイニングとは

通常の文章からなるデータを単語や文節で区切り、それらの出現の頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な情報を取り出す、テキストデータの分析方法である。

引用元:テキストマイニング - Wikipedia

 

例えば、

ベストセラーのキャラクターは、非ベストセラーのキャラクターにくらべて、平均して need と want を2倍、miss と love を1.5倍の頻度で使っている。

ベストセラーの本の主人公は、何かを必要(need)としていたり、何かを欲しがって(want)いたりすることが、それらに関連する単語の頻出度合いからわかった。それらのキャラクターは、問題を解決するために能動的に動きつづけている。一方で、非ベストセラーのキャラクターは、まわりの環境に受動的に振り回され、使われている単語も受動的なものが多いということがわかった。

 

わたしたちは友人の小説をコンピューターに読ませて感情の曲線を測定し、その結果を見せた。すると彼は即座に理解した。そこに描かれた曲線は、本を売りたい作家に贈られるアドバイスのなかでもっとも大切な原則を無視していること示していた。(中略)笑みを浮かべながら読む程度の控えめな場面から、心をわしづかみにされる場面へ移行する最初の境目は、グラフのなかで険しい山か深い谷となってあらわれる。それがあなたの小説の「つかみ」だ。

コンピューターで単語を解析し主人公の感情の起伏を図に表すと、ベストセラーの本には共通するパターンが存在することが判明した。例で登場する『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』では初め主人公たちは不運に陥るが、中盤で持ち前の行動力や才能を利用して大きく盛り返す。最終的にはバッドエンドになってしまうが、この未消化感は次作へとつながっていく。パターンには種類がいくつかあり、ベストセラーのほとんどがそのどれかに当てはまる。また、最初の40ページまでにそういった起伏を登場させることが読者の心を「つかむ」のに重要だと筆者は述べている。

 

ほかにも、ベストセラーには冒頭の一文の力強さとシンプルさが読者を惹きつけていることや日常の言葉( not を短くした n't のような縮約系)が頻出することなどについて触れている。

巻末には『統計学が最強の学問である』の著者・西内啓による解説も載っており、これだけでも興味深い内容になっている。

結局のところ、文章における目新しい発見があったというよりも、これまで多くの指南本でいわれてきたセオリーを統計的な側面から補強したというのが正しい見方だろう。とはいっても、文章に携わる人たちにとって有意義な本であるのは間違いない。