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本から閃き

【読書感想】『ゲノム編集の衝撃--「神の領域」に迫るテクノロジー』

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内容紹介
“この25年の中で、おそらく最も画期的な生命科学技術"
――山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)


生物の設計図、遺伝子。そこに書き込まれたすべての遺伝情報が、ゲノムだ。
この驚異のテクノロジーは、ゲノムを〝編集〞することで、遺伝子を、そして生物そのものを変える。
食料・エネルギー問題を解決する品種改良。根治できないとされてきた難病の治療。デザイナーベイビーという新たな課題。
遺伝子を自由に操作する――。ゲノム編集は、SFの世界を現実のものとした。
本書は、次のノーベル賞候補と目される、この技術のメカニズムと最新成果を、国内外の研究者への取材を基に明らかにする。
これは複雑な生命現象に、進化を続ける科学技術が対峙する瞬間を目撃したジャーナリストによるレポートである。
◆『NHKクローズアップ現代』の書籍化。
山中伸弥氏による序文と、ゲノム編集の国内における第一人者・山本卓氏(広島大学教授)へのインタビューも収載。

 

目次
序文「ゲノム編集とiPS細胞―人類の未来のために」 山中伸弥
はじめに
第一章 生物の改変が始まった
第二章 ゲノム編集、そのメカニズム
第三章 起爆剤、クリスパー・キャス9~爆発的広がりをアメリカに追う
第四章 加速する「ゲノム品種改良」
第五章 超難病はゲノムから治せ
第六章 希望と不安のはざまで〜困惑する研究現場
おわりに
インタビュー「ライフ・サイエンスの先端をいくために」 山本卓

 

ゲノム編集とは遺伝子のDNAを文字通り「編集」する方法だ。DNAに手を加えるための画期的な手法が発明され、科学研究な中でもとくに注目されている分野になっている。

先日、アメリカでヒトの受精卵を使ったゲノム編集が行われことを知り、「そういえば読んだけどブログに書いてなかったなあ」と思いキーを叩いている。

gigazine.net

 

ゲノム編集技術の中で最も有望な、今日CRISPRと呼ばれる反復クラスターは、1987年に大腸菌で初めて石野良純(英語版)らによって記載された。その後、2002年にCRISPRと命名された。

このCRISPRがゲノム編集へと応用可能であると記載されたのは、2012年8月のことで、スウェーデン・ウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエらとアメリカ合衆国・カリフォルニア大学のジェニファー・ダウドナらによるものである。

シャルパンティエとダウドナらは、CRISPRによるゲノム編集の可能性に気付くうちに、当時用いていたレンサ球菌の2つのRNAをガイドRNAとして1つに集約できることにも気付いた。その試みは成功し、今日のCRISPR/Cas9による高効率のゲノム編集が可能となった。

引用元:ゲノム編集 - Wikipedia

 ゲノム編集は遺伝子研究の分野において手法が確立されてまだ数年しか経っていない。

2012年に考案された「クリスパー・キャス9」という革命は人類のあり方さえ変えてしまうほどの衝撃があるのだ。

クリスパー・キャス9では、ガイドRNAというまさに「ガイド」に誘導されてキャス9(別名:ヌクレアーゼ)というタンパク質が標的の塩基配列部分を切断する。損傷を起こした塩基配列は自動で修復され、元の配列に戻ることはない(ノックアウト)。また特定の塩基配列と交換することも可能だ(ノックイン)。


例えば、おとなしい性格で乳量が多いホルスタイン種は、そういった特徴の牛を意図的に交配することで作られた。こういった従来の方法だと、思ったように特質が現れなかったり病気に弱い個体ができたりして、何十年もの歳月がかかる。しかしゲノム編集技術を利用すれば、もっと短期間で実現が可能になるのだ。

 

またゲノム編集は遺伝子組換えとは異なる。遺伝子組換えは別の種の遺伝子を加えることによって特質を引き出している。ゲノム編集では、例えば数万分の一で生まれる肌に色素を持たない白いカエルを人為的に作り出せる。この二つの違いは、自然であるか否かで、ゲノム編集による生物は自然発生する可能性があるが、遺伝子組換えの生物は自然発生しないのだ。

 

ゲノム編集は医療分野での応用も期待されている。「エイズ」は白血球の異常によって免疫力低下を引き起こす完治が困難な病のひとつだ。成分献血血小板や血漿といった特定の成分だけを採血し、体内で回復に時間のかかる赤血球は再び体内に戻す方法)でエイズ患者の血中から白血球だけを取り出し、その白血球にゲノム編集を施して被験体に戻すことで、正常な白血球を増やし、免疫力を取り戻せることが実験でわかっている。

 

ビジネスの分野でも変化が起きている。ゲノム編集界のAmazonと呼ばれる「アドジーン」ではゲノム編集ツールを一括に集約、保管、発送している。これによって、これまで煩雑なうえ費用は高額だった手続きが無くなり、研究者の負担を大きく減らした。

 

 

注射ができる施設さえあればゲノム編集ができてします。(中略)自然と同じものができるというメリットがある一方で、悪用も可能というデメリットがあります。

大きな可能性を秘めているゲノム編集研究だが、専門的な知識がなくても、機械の操作に慣れれば誰でもゲノム編集が可能だという。

また倫理的な問題も大きく、人間に応用されるのはまだまだ一部に留まるだろう。

ただゲノム編集がこれからもどんどん盛り上がっていく分野のひとつなのは間違いない。期待を込めて続報を追っていきたい。